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  • takashi suzuki

つくる責任 つかう責任  パーム油をめぐる問題とRSPO認証

パンダのマークでおなじみの世界自然保護基金(WWF)が中心となり設立された国際NPOにRSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil(持続可能なパームオイルの円卓会議))があります。ここではステークホルダーの参加を通じて、RSPO認証という国際的な認証基準を策定し、「持続可能なパーム油が標準となるよう市場を変革する」をビジョンとした活動を行っています。またこの認証制度はサプライチェーンマネジメントのなかで商品を売る場面、買う場面で企業が選択するための判断基準の一助となるとして、SDGsを背景に今とても注目されています。



ご存じの通り、2015年9月国連によって国連持続可能な開発サミットが開催され、持続可能な開発のための2030アジェンダが採択されました。このなかで定められた、人間、地球及び繁栄のための行動計画としてSDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))が世界中の全ての社会活動の座標軸に据えられることになりました。具体的には2030年までの向こう15年間で達成するために掲げた持続可能な社会を実現するための17の目標と169のターゲットから成り立っており、つくる責任 つかう責任はその12番目の目標です。



では今なぜSDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」でパーム油が注目されているのでしょうか。まず、パーム油は私たちの生活には欠かせないもので、例えばマーガリン、チョコレート、カップ麺、洗剤、シャンプーなど私たちは知らず知らずのうちに日々大量のパーム油を消費しています。次に、パーム油は多用途に使われるだけでなく、単位面積当たりの収量が他の植物油脂に比べて非常に高く、またより安価であるため、人口増加、食糧危機への解決の期待から急速に需要を伸ばし、今では大豆を抜いて世界で生産される植物油脂のトップとなっています。さらに、パーム油は主に飽和脂肪酸のパルミチン酸と一価の脂肪酸のオレイン酸からできており、他の液体油と比べてヨウ素価が低いつまり酸化しにくく食用油として実用的であるという性質があります。

このように現代社会では欠かせないパーム油ですが、急速な農園の拡大と不適切な農園経営などの影響で、環境や地域社会では次のような問題が生じています。

1) 保護価値の高い熱帯林や泥炭湿地林などの伐採と、それによる気候変動

2) 農園造成を目的として禁止行為である森林伐採の火入れによる森林火災・泥炭火災

3) 貴重な野生動植物の宝庫である熱帯林を農園に転換することによる生物多様性の損失

4) 先住民や地域住民の同意を得ない一方的な開発による先住民などとの紛争

5) 農園で使用する有害な農薬や化学肥料などによる周辺の汚染、土壌汚染

6)健康や労働安全への配慮が乏しい劣悪な労働環境や低賃金などの労働条件問題

ここで特に注目すべき点は、パーム油生産のために森林伐採をする必要はないと言うことです。WWFではパーム油生産と森林伐採の関係性を断ち切るために、パーム油生産に関わる生産者、製油業者、貿易商社、マーガリン、チョコレートなどの製造業者、小売スーパー、銀行、投資会社、自然保護団体などの全ての関係者と話し合いを続け、協力してパーム油をめぐる問題を解決することを呼びかけました。その結果生まれたのがRSPOです。現在4,000を超える会員が参加しており会員が取扱うパーム油を合わせると全世界の生産量の半分の規模になります。前述のようにRSPOの最も大きな成果に、持続可能なパーム油に関する認証制度を作ったことがあります。


次にRSPO認証についてですが、RSPOでは「原則と基準認証」と「サプライチェーン認証」の2種類の認証制度が設けられています1)。1つ目は、農園や製油工場を対象に、持続可能な生産が行われているか、RSPOが定めた判断基準となる原則と基準(Principle & Criteria)に則った事項を満たしていることを認証する「原則と基準認証(P&C認証)」です。2つ目は、前述の認証制度によって生産されたパーム油を使用する製品を取り扱う、製造・加工・流通過程を対象に、RSPOが定める要求事項を満たしていることを認証する「サプライチェーン認証(SC認証)」です。認証パーム油を仕入れる商社や加工業者、商品製造を行うメーカーなど、最終製品が出来上がるまでの各工程で製品の所有権を持つ組織は、SC認証取得の対象となります。つまりこの制度はパーム油をめぐる問題を「つくる責任 」、「つかう責任」の両輪で支援するものであります。


Fig. 1 Changes in RSPO participating companies.

RSPO情報サイト3)より筆者が編集


さて、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」は、持続可能な生産消費形態を確保することを目的としています。われわれ消費者の行動すべきヒントとして消費者庁では「エシカル消費」2)を奨励しています。「エシカル消費」とは道徳的消費、倫理的消費という意味で、消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮し、地域の活性化や雇用なども含む、人や社会・環境に配慮した消費活動を行うことです。つまりわれわれは「誰が、どこで、どうやって、どのように作った製品か」を意識しながら買い物をすることが重要であると言うことです。一方で使う責任は消費者だけの問題ではなく、パーム油に限らずサプライチェーンの中では各企業は一様に対等な供給者(生産者)であり、需要者(消費者)であります。企業もまた「誰が、どこで、どうやって、どのように作った製品か」を意識しながら購入をすることが重要であり、もはやこの国際問題を「知らない」では済まされないのではないでしょうか。



2015年にSDGsが採択されてから、株主また消費者の見る目は変わりました。社会を動かす1番の力は消費者の声です。持続可能な生産消費形態を確保する「つくる責任 つかう責任」には複数の選択肢がありますが、RSPO認証はその1つです。



1)RSPO,https://rspo.org/certification/supply-chains

2)消費者庁,https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/public_awa-reness/ethical/about/

3)RSPO情報サイト,http://rspo.jp/blog-entry-16.html

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